暫。 禽獣の系譜
10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
<< >>


--.--.-- *--*

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Permalink *  EDIT * ▲TOP

2010.01.16 *Sat*

禽獣の系譜

先日、仕事先で蝋梅をいただきました。
凄く寒くて雪が降っていた中を、おばあさんが蝋梅を抱えて持ってきてくれました。
香りがとても強く、くらくらする程です。


さて、蝋梅といったらこのお話。

893ものを語るにはやはりこの話の感想を書いてからと思っていたのですが、いかんせん感想を書くのに凄くパワーが必要そうだったのでねぇ…。

これを皮切りに、893もの週間でもしようかと(笑)
書くだけ書いていつの間にか終わってるとおもいます~。
ではでは、記念すべき一発目は、甘さのかけらすらも無い、けれど根底には深い愛のあるこのお話をば。



禽獣の系譜禽獣の系譜
(1992/12)
花郎 藤子

商品詳細を見る




題名:禽獣の系譜
作者:花郎藤子
初版:1992.12
発行:白泉社


****************************************

あらすじ:
突然の父の死により、北日本一帯を支配する木賊組のすべてが17歳になる烈の肩にのしかかる。
跡目をめぐって組では内部抗争が起き、幹部の多くが狂刃に倒れる。
重圧に潰されかかる烈の支えとなったのは、謎の多い若頭・黒羽周次の存在だった。
ところが周次は組を追われかけ、同時に烈自身にも組員の卑劣な欲望の手がのびる。
なすすべもなく蹂躙される烈の前に、ある決意を秘めて再び周次が現れた―。
閉鎖された特殊な世界に生きる男たち。
金を動かし、人を操り、より大きなもののために殉じていく。
彼らの名を“極道”という……。

****************************************



さて、何処から語ろうか。
先ず、この↑あらすじを考えた人が素晴らしい。今まで漫画、小説を読んだ中でも群を抜いて秀逸。
この話はもともとは同人誌で、最初の一話目が発行されたのがなんと1989年…。
それにもかかわらず、話に全く古さが無い。
文章が非常に硬質で、特殊な男達の世界を決して華美に描くこと無く、淡々と書き連ねていく。
少し違うかもしれないけれど、村薫と共通するところがあるかもしれない。
というか、これがそもそもボラに位置するのかが疑問。むしろ文学小説だと思う。
物語の始まりが葬列に始まり、そして最後も葬列に終わる。物語の全てが、冬の寒い雪に覆われているようなイメージ。しんしんと降り積もる雪。主人公烈の孤独がそれに重なり、読む私達も本当に辛くなる。
全四話から構成されていて、そのうち第三話までが主人公烈の視点で、最後の第四話目だけが周次さんの息子の靫正視点に変わる。とある事件が第三話目で起こってしまい、烈の心が死んでしまうから。
作中ほとんどが烈視点で書かれているので、周次さんの本当の気持ちは判りづらい。
実際、烈もそう言っているのだけれども、私達は、周次さんには烈に対して『恋』とか単純な愛ではなくて、血肉を分けた相手に向けるような深い深い愛情に溢れていると思う。
それこそ、どちらかが失われてしまうと、もう生きてはいけないような。
第三話目のところで、エディット・ピアフの『愛の賛歌』が非常に効果的に使われているのだけど、この歌こそがこの物語の本質であり根底ではないかと。それは愛に殉じるということ。
時々『烈は禽獣になれたのか?』という言葉を目にするけれど、暫的な解釈としては『烈は禽獣になれなかったのではなく、ならなかった』と考えます。
そうなるべき人に道を示し、その系譜を途切れさせない為に、その血の橋渡しをする。
そうすることによって烈の属してた木賊の血が失われてしまうのではなく、周次さん…黒羽の血と共に、それは受け継がれてゆくものとなりました。
物語の最後があまりに哀しく、けれどもこの上なく美しく終わるのは、ひとえにこの作者の筆力と構成力の高さだと思います。ああ、烈…!涙無しには読めない。

うわあああああ…大好きな本って、饒舌になる筈なんだけどもこの本に限ってはどうしてもうまく語れない。
こんなところで暫の感想を読むくらいなら、もういっそ本を読んでよみんな…と叫びたい。
ま、そしたらこのブログの意味なんてなくなるんですけど、この本についてはもう読み返すたびにフランダースの犬と同じように愛の賛歌が脳内に流れて、もう無意識に涙が出そうになるので。
言葉の一つ一つがシンプルだからこそ重みがあるんですよ。
本気出したら、多分私達、この作品の感想で論文が書けそう、いやほんと。
だってへたな文学作品よりも文学作品してる。
暫の部屋には読み終わったボラ作品は、置く場所が二箇所ありまして、ほとんどが読み終わったらクローゼットの中で時々出番を待つのみなのですが、この作品はごくごく一部の作品のみが許される聖域…すなわちMA・KU・RA・MO・TO…に常に装備されております。ま、ぶちゃけ言うとあれですね。クローゼットまで取りにいくのがめんどいくらいよく読み返すから、ベッド本にしてるんですけど、たいていは新しくて何度も読み返したい本がほとんどなんですけども。
これは常に傍に置いておきたい本なわけでして。ね。まだ読んでない人は読もう。いいから読もう…。






「鵙目」

膝に乗せたリュウの頭を撫でながら、靫正が言った。

「俺は、あいつの義妹と一緒になるぞ」

振り向いた鵙目の顔に言い切る。

「それで黒羽と木賊の血はまた一つになる。血は、俺が継承させる」

無言のまま鵙目はハンカチを差し出した。

「なんだ」

「……涙を、拭いて下さい」

「俺は泣いてない」

靫正は窓ガラスを下げた。たちまち吹き込む霙混じりの風に頬を打たせながら、

「俺は泣いてなんかいない。鵙目、そうだな?」

と訊いた。

鵙目は前に向き直り、一言、答えた。

「はい――」






結婚式での誓い…死が二人を別つまで、じゃないんだよね。
生においても、死においても共に傍にあるということ。





【勝手に評価】
純文学度:★★★★★
BL度:★★
(ただし、描写はあってもラブラブBLでは全くないし、主人公の烈が可哀相なので、無理な人は無理かと思われ)
総 合:★★★★★(文句なしの名作。純粋に素晴らしい)

同人誌、ハードカバー、ソフトカバーと再版を何度も繰り返してきただけはある重量級の作品。
今は絶版になっているけれど、是非また再版して欲しい作品。そうしたら私達、また買うから。









スポンサーサイト
Permalink *  CM(0) *  TB(0) *  EDIT * ▲TOP

COMMENT

Comment Form


秘密にする
 


TRACKBACK

TrackBack List


プロフィール

万里&おさる

Author:万里&おさる
万里とおさるの腐女子シスターズ。
姉なのにおさるに虐げられて過ごす、万年ディフェンス女、万里。
オフェンス担当、α派の笑顔で人をぶった切る(人に言われた)テラドSなオフェンス担当の妹おさる。
二人合わせて暫。

【当ブログについて】
・ネタバレしまくってます。基本的に最初は日常の日記、折りたたみで本の感想になっています。
・コメント大歓迎です。但し、ブログ内容と無関係と判断したものや、誹謗中傷の類は削除させて頂く可能性があります。
・御同類の方のみリンクフリーとさせて頂きます。でも一言ご報告頂けると小躍りして喜びます。



お気に召しましたらぽちっとしたって下さいまし^^



最新記事



FC2掲示板



カテゴリ

小説:英田サキ (13)
小説:暁由宇 (1)
小説:洸 (1)
小説:安曇ひかる (2)
小説:五百香ノエル (3)
小説:榎田尤利 (5)
小説:いつき朔夜 (1)
小説:音理雄 (1)
小説:鬼塚ツヤコ (1)
小説:神楽日夏 (1)
小説:華藤えれな (2)
小説:加納邑 (2)
小説:綺月陣 (1)
小説:樹生かなめ (14)
小説:久我有加 (1)
小説:楠田雅紀 (1)
小説:剛しいら (6)
小説:木原音瀬 (16)
小説:榊花月 (1)
小説:崎谷はるひ (1)
小説:砂床あい (1)
小説:沙野風結子 (3)
小説:愁堂れな (2)
小説:砂原糖子 (4)
小説:しみず水都 (1)
小説:清白ミユキ (1)
小説:須和雪里 (1)
小説:高遠琉加 (9)
小説:谷崎泉 (1)
小説:玉木ゆら (1)
小説:中原一也 (1)
小説:萩野シロ (2)
小説:花川戸菖蒲 (1)
小説:バーバラ片桐 (5)
小説:鳩村衣杏 (1)
小説:花郎藤子 (2)
小説:樋口美沙緒 (3)
小説:火崎勇 (3)
小説:ひちわゆか (2)
小説:日向唯稀 (2)
小説:真崎ひかる (2)
小説:松岡なつき (2)
小説:松野たばこ (1)
小説:御木宏美 (1)
小説:水戸泉 (3)
小説:水壬楓子 (2)
小説:睦月朔子 (1)
小説:夜光花 (6)
小説:夕映月子 (1)
漫画:秋葉東子 (3)
漫画:亜樹良のりかず (1)
漫画:麻生海 (1)
漫画:阿仁谷ユイジ (2)
漫画:阿部あかね (2)
漫画:あべ美幸 (2)
漫画:雨隠ギド (1)
漫画:天城れの (2)
漫画:ARUKU (5)
漫画:池玲文 (3)
漫画:石川ちか (1)
漫画:石原理 (5)
漫画:井上佐藤 (3)
漫画:海野サチ (1)
漫画:えすとえむ (3)
漫画:エンゾウ (1)
漫画:扇ゆずは (4)
漫画:桜巳亞子 (1)
漫画:岡田屋鉄蔵 (2)
漫画:奥山ぷく (2)
漫画:小椋ムク (1)
漫画:小山田あみ (1)
漫画:梶本潤 (3)
漫画:語シスコ (1)
漫画:雁須磨子 (2)
漫画:川唯東子 (3)
漫画:河井英槻 (1)
漫画:木下けい子 (4)
漫画:京山あつき (3)
漫画:琥狗ハヤテ (1)
漫画:草間さかえ (5)
漫画:九重シャム (1)
漫画:国枝彩香 (2)
漫画:九號 (1)
漫画:車折まゆ (1)
漫画:クロオ千尋 (1)
漫画:黄河洋一郎 (1)
漫画:寿たらこ (6)
漫画:サガミワカ (1)
漫画:櫻井しゅしゅしゅ (1)
漫画:サクラサクヤ (1)
漫画:定広美香 (1)
漫画:嶋二 (2)
漫画:志水ゆき (4)
漫画:蛇龍どくろ (1)
漫画:舟斎文子 (2)
漫画:SHOOWA (3)
漫画:神葉理世 (2)
漫画:杉原チャコ (1)
漫画:杉本亜未 (1)
漫画:鈴木ツタ (3)
漫画:関口かんこ (1)
漫画:高久尚子 (1)
漫画:タカツキノボル (1)
漫画:高永ひなこ (1)
漫画:高峰顕 (1)
漫画:宝井さき (1)
漫画:宝井理人 (2)
漫画:田倉トヲル (1)
漫画:館野とお子 (2)
漫画:環レン (1)
漫画:椿かつみ (1)
漫画:天禅桃子 (1)
漫画:トジツキハジメ (1)
漫画:直野儚羅 (1)
漫画:中村かなこ (1)
漫画:夏目イサク (4)
漫画:七織ニナコ (1)
漫画:楢崎壮太 (1)
漫画:南国ばなな (1)
漫画:二宮悦巳 (2)
漫画:ねこ田米蔵 (1)
漫画:葉芝真己 (3)
漫画:日高ショーコ (2)
漫画:びっけ (1)
漫画:秀良子 (3)
漫画:平喜多ゆや (1)
漫画:葛井美鳥 (4)
漫画:藤谷陽子 (1)
漫画:藤たまき (2)
漫画:古田アキラ (1)
漫画:ホームラン・拳 (1)
漫画:ホコ (1)
漫画:穂波ゆきね (1)
漫画:本庄りえ (1)
漫画:本間アキラ (4)
漫画:真枝真弓 (1)
漫画:まさお三月 (2)
漫画:斑目ヒロ (0)
漫画:町屋はとこ (1)
漫画:松尾マアタ (1)
漫画:松本花 (2)
漫画:麻々原絵里依 (3)
漫画:ミナヅキアキラ (1)
漫画:宮城とおこ (1)
漫画:宮本佳野 (1)
漫画:むとべりょう (1)
漫画:明治カナ子 (3)
漫画:萌木ゆう (1)
漫画:本木あや (1)
漫画:元ハルコ (2)
漫画:桃山なおこ (1)
漫画:もろづみすみとも (1)
漫画:門地かおり (3)
漫画:モンデンアキコ (1)
漫画:ヤマシタトモコ (2)
漫画:山田コウタ (1)
漫画:山田2丁目 (2)
漫画:山田ロック (1)
漫画:大和名瀬 (1)
漫画:山中ヒコ (3)
漫画:山本小鉄子 (3)
漫画:やまねあやの (4)
漫画:柚摩サトル (1)
漫画:ユキムラ (2)
漫画:吉池マスコ (3)
漫画:ヨネダコウ (1)
漫画:依田沙江美 (1)
漫画:わたなべあじあ (1)
一般書:岩本ナオ (1)
一般書:大武ユキ (1)
その他 (5)



FC2カウンター



月別アーカイブ



最新コメント



検索フォーム



リンク

このブログをリンクに追加する



QRコード

QRコード



Copyright © 暫。 All Rights Reserved.

テンプレート配布者: サリイ   素材: Bee  ・・・   
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。